笑う棺桶
人生を楽しく過ごすためには、笑顔でいるのが一番だと、
そう思っていても、いつか死ぬことを思うと一瞬真顔になる。
どこかのおばあちゃんが どこかの最年少オリンピック選手を見て、
「迷いなく明日を信じて進めるのが羨ましい」と言っていた。
事故で死ぬことも、病気で急逝することも考えず、永遠に
自分が続くものと信じる。これまで生きてきて、死んだこと経験が
無いから、きっとこれからも死なない。そんなよく分からない
考えで毎日は埋もれている。
棺桶に詰め込まれたとき、自分は良い顔で眠れているだろうか。
灰になって燃えるとき、一緒に燃えるものが花だけで、それだけで
満足するだろうか。
願わくば、これからも生きていく人の記憶の中で、たまにひょっこり
現れたい、使い古された考えが頭をよぎる。
資本主義の敗北
同僚が「彼女が帰ったあと一人で家にいると猛烈に寂しくなる」と言っていた。
実際に経験してみると、床に落ちる長い髪、履いていたスリッパ、飲んだあとのコップ、使ったタオルなどなど、抜け殻たちが散乱している。
部屋の電気つけたときの虚無感がすごいんだと知った。
学生時代ならいざ知らず、明日からまた仕事という事実にも蝕まれる。
秋晴れの日、大きな湖の周りをぐるっと歩きながら一緒に写真を撮ったり。
脇で紅葉している木々が、「死ぬときに思い出しそう」と思うくらい綺麗だったり。
帰りによった喫茶店がとてもオシャレで、頼んだケーキがどれも美味しかったり。
そういう記憶を時折思い出して、また、泥のような社畜の日々を越えていく。
長文クソポエム
この人生を全うするにあたって、何を目標にすれば良いか分からなくなってきた。
(一人暮らしになると、自分だけの時間が増えてしまって良くない)
大切なのは家族か、恋人か、友人か。
可能なら、旧友を呼び出して「分からん!もう何も分からんよ!」と酒を飲み交わして忘れたいところ。
ただ先延ばししてるだけかもしれんが。
そんなことをつらつら書きながらテレビ見てたら、たけしの情報7daysのお天気キャスターがめちゃカワで、ムクムクと感情が湧いてきた。(おわり)
肉体のない民族 (2)
大学のキャンパスは小さい町みたいなもんで、同じ大学だろうと他学部の人とはほとんど交流はない。サークルだったりクラブだったり、そういうのに所属していれば関わりはあるけれど、あいにく僕は入っていないし。
つながりと言えば自分の研究室のゼミのメンツだけ。
図書館の愛しき冷暖房に別れを告げ、アイと共に研究棟の冷暖房に二股をかけに行った。途中でアイが所望した生協の唐揚げさんを携え、研究室の扉を開けた。
「もしかして唐揚げさん!??」
この一瞬で匂い分子がどれだけ彼のもとに届いたか分からないけど、反応速度が尋常じゃない。
「帰ってきたよ唐揚げくん」
失礼なニックネームでアイが呼ぶ。
二句 満太郎。我が研究室屈指の巨漢くんである。常に何かしら口に入れてモグモグしている。目を離した隙につまみ食いを止めるタイプ。
ちなみに情報セキュリティオリンピックの優勝経験がある。
「この特集読んだ?」
二句が読んでいたのは例の臨床試験の特集だった。
「読んだよ。二句もヒューマノイドにしてもらった方が健康体になれるんじゃない?」
「バカを言うな。食を奪われたら俺には何も残らない」
たしかに。骨と皮になるかもな。悪いなのび太、このヒューマノイド一人用なんだ。これはジャイアンだ。
「試験の成り行きに興味はあるが、巻き込まれるのはごめんだ。合成肉が含まれているとは言え、唐揚げさんをいつでも食べられる環境にマジ感謝。現状の環境リスペクトォ~」
目を細くして遠くを見つめる二句。遠くと言っても研究室の壁なわけだが、目は肉汁で満ちていた。
心なしかさっきより太い。
「まぁたしかに、唐揚げさんは美味しいね」
アイが唐揚げさんの皮を剥ぎながらそんなことを言う。いやいやいやそこ一番美味しいとこやで、何してはるんですか。
そんなアイの行動を目を限界まで開き見つめる二句に、僕は真面目な話を振る。
「お前の実家ってこっちだよな?」
「ん?ああ、こっちだぞ。俺の心はそこには無いが」
「ちなみにどこにある?」
「あそこ...」
唐揚げさんの中身だけ食べ始めた人を指さす。おい、俺の好きな人を指さすな。俺も心配なんだ。
「じゃあ臨床試験も蚊帳の外の話だな」
所詮 二句もシティーボーイかよと、天井に向かって伸びをする。郊外出身の僕やアイにとって、臨床試験は最近ちょっとした問題だ。
窓が白く曇っていた。暖房と僕達の確かな体温が、この部屋を暖める。身体から発せられるぬくもり。エネルギーを使って動かされるこの肉体。臨床試験はその熱を代償にして成り立っている。
いつの間にか唐揚げを食べ終えていたアイが、記事を読み返しながら、
「でももしかしたら、この辺でもやるかもね」
と何の気なしに呟いた。
明日面接で作文書くみたい 2016.5.5
書かされる、否、書かせて頂けるらしいので長文の練習したいんだけど、これと言ったネタが無い。
そこでヴァターシが就活で出会った人々を紹介してみる。こんな適当な文章で練習になってるかはとても怪しい。
エントリーナンバー1
受付「こんにちは~ お名前を教えていただけますか?」
ワタシ「こんにちは、私○○と申します。本日は御社の、 」
エントリーナンバー1「こ”ん”に”ち”は”!!わたくし○○大学○○学部の○○と申”し”ま”す”!!!(最敬礼) 本日は御社の説明会に参加させて頂きたいと思い参”り”ま”し”た”。会場はどちらでしょうか!!!(ガン見)」
受付「えっと・・」
すごい肩肘張ってた。その男の子の後ろについて会場まで行ったけど、廊下ですれ違う人全員に最敬礼。説明会10社行ってアレだったら正気を疑う。
企業が説明会を開始した3月辺りでは、質疑応答で「本日はお話有り難う御座いました、私○○大学の○○と申します。質問なのですが・・・」ってクソ長い台詞を付ける子も多かったけど、4月後半になってみんな慣れたのか、そういうのは少なくなった印象。
その子と遭遇したのは4月半ばで、自分より学歴上だったから複雑な思いだったけど、心の中でエール送っといた。
エントリーナンバー2
社長さん「貴女はスペイン語専攻らしいですが、なぜこの業界に?」
エントリーナンバー2「本当はエステ業界に行きたかったんですが、他の業界も見てみようと思って、、」
マジかよって思った。歯車作ってる会社だったからな。
自分は工学系だから潰しが利くけど、売り手市場の今年でもさえ語学系は相当無理を強いられる分野なのかなって思った。語学専攻でも喋られない子は沢山いるらしいし、いままで何してきた?って聞かれて「バイト」だけでは押しが弱すぎる。
そろそろ文章うつの辛くなってきた。読むのも辛くなってきたな。わかり哲也
エントリーナンバー3
おれ「あのアニメいろんな要素混じってておもしろい」
仲良くなった阪大修士の子「そうだね。あれはとてもアナーキーだよね。」
漏れ「アナーキー・・・アナー・・・」
分からなかった。別れた後すぐスマホで調べちゃったよ。
見た目も去ることながら(めっちゃ阪大フェイス)、言動もめっちゃ阪大スピーキン。
これがコッコウリツのチカラかッ ってしばらく車内でうなってた。
まぁこんなもんかな。さっきの子ともう一人、京大の博士課程の子がいて、
「私は○○について明るくありませんが、、」って質疑とばして、明るいってリアルで聞けて興奮したりした。
ふぅ、乱文失礼しました。おかげで長文欲求は収まったZO★。
明日の作文と面接が無事にスルーすることを。。。。。面接あったな。。
シンゴジラ 2016.8.3
シンゴジラ観てきた。
一言で言うと、災害ドキュメンタリー。
言葉を借りるなら、「特務機関のない今の日本に使徒が襲来したとき政府はどう戦うか」、「プロジェクトX のゴジラ回」などと言える。
(以下ネタバレあるし 未視聴の人はこんなの読んでないで予約だ!)
3.11を踏まえて作られた本作は、震災後放送された多くのドキュメンタリー番組の雰囲気を漂わす。自然の圧倒的な力をついこの前経験した日本人だからこそ、この作品に強い魅力を見いだす。映画開始から終了まで、ゴジラという絶対的で圧倒的な存在は、怪獣というより神格化された象徴のように見えた。
この作品の良いところは、みな頭のキレた者ばかりだということだ。総理大臣だけ最初少し優柔不断だが、この程度は本作の”遊び”の部分だろう。そんな切れ者達全員を縛りつけるのが、日本独特の悪い社会構造である。散々叫ばれる縦割り社会、無駄の多い会議、年功序列などが、彼らに少しずつの足枷となりゴジラという「大災害」に対応しきれなくなっていく。
そんなデメリットの下、それでも刃向かう日本(政府)の底力が本作の見せ場だろう。
国連の原爆投下リミットを背中に感じつつ、官僚がその優秀な頭脳をフルに使い、自衛隊など関連各所と連携をとり、不眠不休、全身全霊でゴジラに向かっていくシーンは 手に汗握るなんて陳腐な言葉じゃ間に合わない。劇場で失禁するひとがいても、私は笑わない。
虚構対現実、ゴジラ対日本 の看板に偽りはない。天才博士のスーパー兵器は登場しない、あくまで既存の自衛隊・全国の化学プラントなど、私たち目線で戦う。だからこそ、それら兵器が全く通用しないシンゴジラは怖い。ほんっっっっとうに怖い。
冒頭で神格化された象徴と言ったが、お世辞も比喩もなしで、”私たち”は神と戦っている。そういう空気が、劇場を包み込む。中盤の、暗闇の中のゴジラは特にヤバいのでオススメ。
長々と書いてしまったが、とにかく面白い。未視聴の人ははやく劇場へ。てかネタバレアリって書いてるのになに読んでるんだ。
映画マニアではないが、これがいわゆる”傑作”なのだろうと確信した。
肉体のない民族 (1)
《アジアの超大国。そこで束ねられた民族のいくつかが肉体を失った。残った魂と思考のうち、容れ物の必要な魂は、肉体が無くなったあとすぐに消えた》
「起きてる?」
起きてると言われれば起きてる。だけど君と難しい会話が出来るほど頭は冴えてないから、もしかしたら寝てるかもしれない。
「うわ、めんどくさー・・」
嫌われたらしい。
図書館の閲覧室。本はデジタル化の波に逆らえなかったけど、まだその役目を終えていない。適切に管理された温度と湿度は、僕にとっても心地よかった。静寂に満ちた教養の場は睡眠学習がはかどる。眠らない理由は見当たらない。
ん?豊富な知識をもち、静かに眠る僕はもしかして本と同義なのではないか。そうだ、そうに違いない。だって整然と並び堂々とした様は、まさに僕みたいじゃないか・・。
「頭見てもらったら?」
「人の思考を読まないで」
顔をあげて正面に座るアイを見た。
プログラミングの本を読んでいたらしい。今度の試験も楽々合格するんだろう。努力家の彼女は学年でも上位の成績。見た目はムスッとしてるし男まさりだけど、笑ってるときは最高に可愛い。
それに対して僕はと言いますと。成績は上の下。見た目は、まぁ平均より上?見る人が見れば中の上?だと思いたい。顔面偏差値なんて測れないし、なんとでも言えば良いと思うよ。こんにちは木村拓哉です。
「ねぇユウ、これ読んだ?」
情報学科の学生がよく読む学術誌だった。新刊出てたんだ。木村拓哉の僕は答える。
「まだ読んでないけど」
「チョ待てよっ」
「は?」
食糧関連法案 通称フーリーは、ここ数年の世界的な不作を受けて可決された。臨床試験もその一環で、脳みそをデジタルに置き換え、体をヒューマノイドにするというものだ。食料不足の深刻な地域で実施されるらしい。拓哉ネタは古いので封印する。
「アイって西部出身だよね。そっちではやるの?」
「やるみたい。お父さんとお母さんはそこそこ稼げてるからフーリーには参加しないよ。参加してほしくもないけど」
「他の人は参加するの?」
「そんなに多くはないけどね。宗教が特殊だから抵抗は少ないんじゃないかな、うちの家は無宗教みたいなもんだけど」
彼女が生まれ育った西部では、ラマジャンという宗教が根付いている。昔、身分を隠して人間界に住んでいた神様が病で両目を失い、それを嘆いた人間界の親友が片目をあげたそうだ。他者のために身を削ることは美徳とされ、臨床試験への理解は宗教の存在が大きいらしい。
「と言われても、自分の人格をサーバーに保管するのは怖い」
彼女は同意のまなざしを僕に向けて、一呼吸おいて言った。
「家族を養うためとはいえ、西部の人も怖いとは思ってるよ。だけど政府と冷戦状態の地域にわざわざ貴重な食料を送らないよね。たぶん今回の臨床実験も、敵に塩は送らないけど作る方法は教えるってことだと思う」
「なるほど・・」
よく分からなかった。アレかな、食料はやらんけど電脳化して機械いっぱい動かして野菜作って生き延びろってことかな。国外にも言い訳できるし。たぶん。アイちゃんは説明ヘタだから地の文で考え込んじゃったよ~
シュッ
対面からカウンターパンチが飛んできた。
木村拓哉はまたしても思考を読まれた。
(つづく?)
小説家になろうにて”ベンザクロック”名義で公開しています