「こんなこと彼氏に言うことじゃないけどさ」

「こんなこと彼氏に言うことじゃないけどさ、実は元彼と来たことあるんだよね」

IKEAへの道すがら、そうおっしゃいました。

女性はあまり昔の男を引きずらず、彼氏の前でもそういう話を気にせずすると聞いたことはある。

口にはしないけど、その度こちらの心は動揺する。

その子と一緒に居たいと思うのは、これからの欲求。

その子を知りたいと思うのは、その子を形成した今までの出来事を知りたいという、過去への欲求になる。

もっと知りたいと思っていると、昔話を掘り当ててしまうことが、たまにある。

「一緒に行ったことがある」ならまだしも、「泊まったことがある」となるともうダメ。主観的・自分的に最悪のシナリオを想像して泡を吐き、雄叫び上げながら頭を打ち付けて死ぬしかない。

みみっちいし、その子の過去も欲しいと思ってしまうとは、本当どうしようもない。

そして、どうしようもない自分と、変更できない過去を混ぜこんだ

気持ち悪い不条理のなかで、どこか愉快に息を吸う。