自分のことを棚に上げて語る仕事への熱意
会社に”技術顧問”という肩書でおじいちゃんが入社してきた。
60歳くらい。
頭はツルツルで性格は少し頑固。ただ、とびっきり優秀なエンジニア。
そんな人のもとで、私は10月から新しい部署に配属された。
新部署立ち上げの際、メンバーに誰が欲しいか聞かれたおじいちゃんは
「うーん、最低でも○○くらいの奴」と言ったらしい。
その○○が私で、そのまんま選ばれた。
すこし複雑。
その師匠となるおじいちゃんの講演が、本社で開催された。
自分は支社からWeb経由で参加した。便利な時代である。
周りの同僚も結構な人数が視聴していた。
前半はご本人の経歴。それから、前の会社で携わったトンデモ案件の紹介。
大プロジェクトで失敗し、原因究明のためずっと家に帰れず、
会社の保健室が24時間体制になってそこのお世話になったとか。
ただそんな経験をしても、他人にそういった無理を強いることはない。結構他人のグチは言うが。
聞き手は若手から年配の人まで様々、入社ちょっとの人から部長クラスの人。
その中には、弊社最年長の理論屋おじいちゃんもいた。
理論屋おじいちゃんは、師匠のおじいちゃんよりも年上で70歳くらい。
前半の技術的な話は、二人のトップレベルな質疑応答で進んだ。
しばらくして師匠の技術的な話が終わり、仕事に対しての姿勢をみんなに問う場面があった。
みんな仕事楽しいですか?与えられた仕事をこなすことで悦んでないか?
支社で隣に居るときも、常日頃 嘆いていた事だった。
その問いかけで、画面の中の聴衆が言葉に詰まる中、理論屋おじいちゃんが声をあげた。
「私は今でも楽しい」とおっしゃった。
かっこいいと思った。
めちゃくちゃかっこいいと思った。
同時に、横目で周りの様子を伺った。
まっすぐ画面を見つめる同僚もいるけれど、諦めたような笑いをする同僚もいた。
忙しくて仕事を楽しむ余裕なんてない。そういった感じ。
仕事の姿勢についての話題でひとりきり意見が交わされ、講演会は終了した。
支社では一斉にイヤホンが外され、通常業務に戻る前に感想を言い合っていた。
「夢もって働こうぜ、○○君!おれは持ってないけど笑」
そんな話はしてない
「やること無いからフレックスで帰るわ~」
やることはあるぞ!
師匠おじいちゃんが嘆いている日常が、支社には横たわっている。
私も含めてほぼ全員、エンジニアを名乗る資格は現状無い。
現場で手計算して計画を進められる能力があるか?
トラブルが発生したときに、俯瞰的に物事をみる力があるか?
全く無いけど、無くてもどうにかなってるから堂々と目を背けられる。
知識のないエンジニアが、知識のない客の案件を食い物にしている。
配属から2か月だけど、おじいちゃんから学んだことは沢山ある。
ただ一方で、諦めたように笑った同僚の気持ちも分かる。
忙しすぎるし、そのくせ残業するなと上から言われる。
学ぶ機会も元気も奪われる。
さらには売り上げを伸ばせと言われる。
訳が分からない。
売り上げを考えるのは経営者の仕事じゃないのか。。。。話が逸れた。
技術者のレベル向上、
一方で、昨今の働き方改革。
これらは両立するのか?
忙しさにもよるが、正直 両立は難しいのではないかと思う。
主語が大きくなるが、優秀なエンジニアは 残業時間なんて気にしていない。
会社で勉強したり、土日にも勉強している。電車でも本を広げる。
その熱意はどこから生まれるか。
仕事が楽しいから、家族を守らなくてはいけないから。
色々あるけど「好きこそ物の上手なれ」を師匠のおじいちゃんは体現していた。
新部署では今後も、おじいちゃんとマンツーマンで仕事を進めていく。
技術を習得することも大事だけど、それと同じくらい
「周りの同僚をどれだけ巻き込めるか」も大切になってくる。
誠心誠意、精進していきたい。